本研究は、Multi Quantum Magic Angle Spinning(MQ-MAS)MR法を用いて、固体医薬品中のNa、Al、Mg、Caなどの金属原子の分子状態をダイレクトに評価することを目的としている。昨年度までに、^<23>Na MQMAS NMR法により、ナプロキセンNa及びクロモグリクサンNaの無水物・水和物について分子状態の評価、低含量製剤中の擬似多形識別が可能であることを報告した。本年度は、^<23>Na MQMAS NMR測定に加えて、^1H-^<13>CCP/MAS測定、^3Na-スピン格子緩和時間(T_1)測定及び^1H-^<23>Na接触時間依存性測定を行い、ナプロキセンNaの4種類の擬似多形の構造予測を行った。そして、単結晶X線構造解析より得られた結晶構造との比較を行い、MQMAS NMR測定結果の妥当性を評価した。^1H-^<13>C CP/MAS NMR測定の結果より、4種類のナプロキセン擬似多形間ではナプロキセン部位の構造変化は小さいと考えられ、水和後においてもナプロキセンの分子配列は類似した状態で保持されていると推察された。各種^<23>Na NMR測定の結果、ナプロキセンNaのNa核に水分子が吸着しており、擬似多形の水和数増加につれNa分子に吸着する水分子が増加することが確認された。この結果より、水分子は主にナプロキセンのNaチャネルにアクセスし、Naと水分子で形成されたチャネルは水分子の吸着量につれて拡大すると推察された。ここでMQ-MAS NMR測定より予想された各種ナプロキセンNa擬似多形の構造は、単結晶X線構造解析から得られた結果と一致した。以上の結果より、^<23>Na-MQMAS NMR法は、医薬品擬似多形の構造予想に応用できる有用な手法であることが示された。今後製剤分野において、^<23>Na-MQMAS NMR法の適用が拡大することが期待される。
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