研究概要 |
高齢化、高ストレス社会の中で、生活習慣病やメタボリックシンドロームの発症が深刻化している。しかし、これらの慢性疾患は自覚症状がないまま進行しているため、日常的な健康管理や早期診断が最も重要な課題になっている。現在、臨床検査には主に血液や尿などが用いられているが、衛生面や感染性などの問題点がある。そこで本研究では、採取が簡便で痛みを伴わず、長期保存が可能なヒトの爪に着目し、慢性疾患の診断材料としてヒトの爪の有用性を検証することを目的とした。本年度は、ヒト爪中微量に存在する光学アミン類化合物の一斉分析法の開発を行った。これまでもHPLC-蛍光検出法、2D-HPLC法などが報告されていたが、分析時間が長く、検出感度が不十分などの問題点があった。そこで、ジアステレオマーのUPLC-ESI-TOF-MSによる迅速、高感度一斉分析法を開発した(畠中)。それにより健常人と生活習慣病患者の爪中微量に存在する遊離D,L-アミノ酸の一斉分析を行い、疾患との関連性を調べた。その結果、ヒトの爪試料から15種類の遊離L-アミノ酸と初めてD-アラニン、D-プロリン、D-バリン、D-ロイシン、D-イソロイシンなど5種類のD-アミノ酸を検出することに成功した。また、健常人と糖尿病患者における爪中遊離アミノ酸の含量を比較検討したところ、L-アミノ酸はほとんど同量検出されたが,糖尿病患者の爪中のD-アミノ酸は健常人と比較して、含量が少ない傾向にあり、糖尿病疾患との関連性が示唆された。詳しい解析を行うため、今後疾患患者の例数を増やし、検討する予定である。
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