研究概要 |
前年度までは,ヒトの爪試料から15種類のL-アミノ酸と初めて5種類のD-アミノ酸(Ala, Pro, Val, Leu, Ile)の検出に成功した。そこで,本年度は疾患患者の例数を増やし,慢性疾患の臨床分析試料としてのヒト爪の有用性を検証することにした。ヒト爪の採集は,対象者に同意を得た後行った。健常人と糖尿病患者男女各20人から得られた爪試料は、開発した迅速,高感度なUPLC-ESI-TOF-MSアミノ酸光学異性体一斉分析法を用い,糖尿病患者と健常人爪中の遊離アミノ酸定量値のD/L比を比較した。その結果,Proを除いたAla, Val, Ile, Leuの4種類のアミノ酸では有意差(P<0.01)が得られた。また,詳細に男女別に比較を行ったところ,男性はAla, Pro, Val, Ile, Leuの5種類全てのアミノ酸で有意差が得られたが,女性では,Ala, Val, Leuのみに有意差(P<0.05)が得られた。従って,Ala, Val, LeuのD/L比は,糖尿病診断の新たな一手段となる可能性が示唆された。 これらの結果より,非侵襲的なヒト爪は糖尿病など慢性疾患診断の新規臨床分析試料となることが期待される。
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