本研究において薬物貯蔵庫として利用する電解重合膜の作製条件について、サイクリックボルタンメトリー(CV)を用いて詳細な検討を行った。当該年度は、薬物放出を担うフェニルボロン酸の固定化量の制御について検討を行ったが、重合膜中のその含有率を直接求めることが困難であったことから、代わりに電気化学的活性を有するニトロキシルラジカル化合物をピロールに連結し、電解重合条件によって変化する置換基の含有率をCVを用いて評価した。その結果、ピロール誘導体のみで電解重合を行うよりも、ビチオフェン、ターチオフェンを共存させて共重合膜を作製するほうが、置換基導入効率が向上することが明らかとなり、それらの混合比率を変化させることによって、導入量も制御可能であることが明らかとなった。また、重合時のモノマー濃度、掃引速度および掃引回数を操作することによって、重合膜の固定化量や厚さにも変化をつけることが可能であった。定電位電解による電解重合膜の作製も可能で、電解時間を調節することにより、膜厚や固定化量を制御できた。 これらの結果から、電解重合膜そのものの固定化量や厚さ、および薬物の放出を担うフェニルボロン酸の固定化量それぞれを、種々の電解重合条件を任意に操作することにより、自由に制御できることが明らかとなった。これを利用することにより、インスリンの膜中への貯蔵量および糖濃度依存的なインスリンの放出量を様々なオーダーで制御できることが示唆された。
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