研究概要 |
21年度に行った研究から、ピロールとチオフェン類との電解共重合により作製した電解重合膜の組成を詳細に制御できることが明らかとなったので、22年度は薬物モデル化合物の重合膜への取り込みと、糖濃度依存的な放出について検討を行った。 はじめに、電解重合可能な1-(3-ヒドロキシプロピル)ピロールと糖濃度依存的に負電荷を形成する4-カルボキシフェニルボロン酸をエステル結合により連結し、重合単量体を得た。この単量体と2,2'-ビチオフェンを、薬物モデル化合物であるアスピリンの存在下、サイクリックボルタンメトリーを用いて電解共重合し、薬物貯蔵膜を作製した。次に、この重合膜をグルコース水溶液に浸漬し、糖濃度依存的な負電荷形成によるアスピリンの放出について検討し、紫外可視分光光度法によりアスピリンの放出量を調べた。 種々の電解条件や糖濃度条件でこれらの検討を行ったが、最終的にグルコース溶液中へのアスピリンの放出を確認することができなかった。21年度の研究実績から、共重合膜中のモノマーの組成を自由に制御できることは明らかではあるが、電気化学的活性を持たないフェニルボロン酸の重合膜中への取り込み比率を正確に把握することが困難であった。また、アスピリンの放出に至らなかった原因として考えられるのが、溶媒条件であると思われた。重合は有機溶媒中で行ったが、放出検討は水溶媒中で行うため、溶媒の変化によって重合膜が何らかの構造変化を起こし、予想された放出機構が機能しなかったものと思われる。 これらの結果から、水溶媒中での薬物貯蔵分子インプリントポリマーの作製や、電気化学的手法、紫外可視分光光度法に因らない重合膜や薬物放出の評価法について、現在さらなる検討を行っている。
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