本年度はコレステロールとβ-シトステロールの競争的可溶化実験をモデル腸液系で定量化した。その標準的なモデル腸液系は数種の混合胆汁酸塩(10mM)、オレイン酸(4mM)、モノオレイン(2mM)、ホスファチジルコリン(2mM)とし、今回はコレステロールを可溶化させる会合体の大きさを左右するホスファチジルコリンの濃度を変えて測定した。透過型の電子顕微鏡を用いた会合体の構造解析から、標準的なモデル腸液で150nm半径のエマルション形成していることが分かった。油であるオレイン酸、モノオレインが存在しない場合は胆汁酸塩とホスファチジルコリンで構成された約5nm程度の混合ミセルを形成していることも判明した。故に、コレステロールや植物ステロールを可溶化させる会合体に対する油類の与える影響はかなり大きいことが分かった。この溶液系にコレステロール/β-シトステロールの競争的可溶化実験を行うと、オレイン酸類の油を添加しないと、モデル腸液に対して2.5倍ほどステロール類の可溶化量が減少する。油類のステロール類の可溶化量向上に対する影響は大きい。油類を添加していない系及びモデル腸液でも、β-シトステロールの添加によって、約半分のコレステロールの最大可溶化量が低下することが分かった。ホスファチジルコリンのモル濃度を標準の2mMから10mMまで増加させると、その割合に応じて、コレステロールの最大可溶化量が添加しない時に対して25%程度まで低下することが分かった。リン脂質の増加に従い、コレステロール/β-シトステロールの選択的な可溶化の割合が変化し、リン脂質の添加も有効であることが分かった。
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