肺疾患治療を目的とした経肺投与ナノ粒子製剤の開発を目的とし、ナノ粒子を経肺投与製剤化したナノコンポジット(NC)粒子を調製した。装置へ充填したNC粒子量に対する、放出されたNC粒子量の割合(ED値)及び肺深部へのNC粒子到達性(FPF値)を改善するために製剤への修飾検討を行った。従来法でナノ粒子調製時に分散安定剤として用いていたポリビニルアルコール(PVA)を、アルギニン(Arg)に変更した。PVAを用いた場合(ED値96%、FPF値15%)と異なり、Argを用いて得られたナノ粒子懸濁液をそのままスプレードライしてもNC粒子を得ることが可能であったが、ED値、FPF値共にPVAを用いた場合より低下した(ED値48.5%、FPF値5.5%)。一方、スプレードライ時に様々な種類の賦形剤(トレハロース(Tre)、バリン(Val)、トレオニン(Thr)、グルタミン(Gln))を加えてNC粒子を調製したところ、Valを除く賦形剤を加えた場合に、水に再分散が可能なNC粒子調製が可能であった。ED値及びFPF値を比較してみたところ、何れもアルギニン単独より高いED値を示し(Tre:93.0%、Thr:75.3%、Gln:90.6%)、また、FPF値はTreを用いた場合に最高値を示した(Tre:25.3%、Thr:17.6%、Gln:23.7%)。 次にスプレードライ時に水へ懸濁及び溶解させるナノ粒子、賦形剤の合計濃度を変化させてNC粒子を調製したところ、濃度が1.0%の時にFPF値は最大となった(濃度:FPF=0.5%:19.7%、1.0%:30.2%、1.5%:24.5%、2.0%:25.3%)。高濃度ではNC粒子密度が上がり、空気力学的粒子径は増加するためFPF値は低下し、逆に密度が低すぎるとでは空気力学的粒子径が減少しすぎるため、最適値が存在したと考えられる。
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