本研究の目的は、遺伝子増幅法を利用した新たな抗がん剤候補をスクリーニングするための技術を開発することである。以下の3点の知見が得られた。 1.フォーワードプライマーとリバースプライマーから調製したプライマーダイマーを鋳型とすることで、非意図的なPCR産物の増幅を助長することなく、目的PCR産物で化合物のDNA相互作用性の有無を判断できることが分かった。この結果は、蛍光指示薬であるSYBR Green 1を用いたリアルタイムPCR装置での化合物のDNA相互作用性の有無を正確に分析する可能することを示唆する。 2.プライマーダイマーを鋳型に用いて、4種類の化合物(DAPI、ダウノルビシン、アクチノマイシン、塩酸ベラパミル)のDNAへの相対結合力の相対評価をおこなった。一般に結合力が高いとされる化合物ほど、鋳型DNAと相互作用し、鋳型DNAの解離を抑制して遺伝子増幅効率を悪化させた。また、化合物を含んだPCR産物をマイクロチップ電気泳動装置で確認したところ、非意図的PCR産物が増幅されていないことがわかった。 3.高感度分析を行うために、PCR条件の変性温度条件の検討をおこなった。鋳型DNAの融解温度付近にすることで、化合物のDNA相互作用性の有無を高感度に測定できることが分かった。また、変性温度を鋳型DNAの変性温度よりも低い温度に設定した場合、遺伝子の増幅が見られないことが分かった。DNA相互作用分子のモデルとしてDAPIを使用したところ、50nMでも遺伝子の増幅効率阻害が見られた。現在、知られているあらゆるDNA相互作用分子検出方法よりも高感度に検出できることがわかった。
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