研究概要 |
申請者はこれまで正電荷リポソームによる遺伝子導入の研究を行い、従来では安全性は高いものの導入効率が低いとされている非ウイルスベクターに対して、糖脂質系バイオサーファクタントのひとつであるMEL-Aを用いることにより高い遺伝子導入効率を実現することに成功している。さらにMEL-Aが有する脂肪酸における不飽和脂肪酸の割合、すなわち不飽和度を変化させた3種(不飽和度;9.1%,21.5%,46.3%)のMEL-A含有正電荷リポソームを作製した。これらの正電荷リポソームを用いて、遺伝子導入効率に及ぼす影響、及びその要因を明らかにすることで、従来よりも遺伝子導入効率の高い正電荷リポソームの開発を目的とした。 その結果、MEL-Aの有する脂肪酸の不飽和度は遺伝子導入効率に著しく影響を与えることを明らかにした。このことは、MEL-Aの不飽和度は正電荷リポソームとDNAが結合する量、正電荷リポソームと細胞膜との結合量、DNAが細胞内に移行する量等に著しく影響を及ぼすことを明らかにした。以上より、MEL-Aの不飽和度が正電荷リポソームの物性に及ぼす影響は不明であるものの、細胞内への遺伝子導入に重要な因子に影響を及ぼし、その結果、遺伝子導入効率に著しく影響すると考えられた。この結果は、遺伝子治療分野において安全で遺伝子導入効率の高い非ウイルスベクターの開発の基盤研究として意義の大きい研究結果であると言える。
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