研究概要 |
1. カチオン性両親媒性薬物(CAD)によって生じる薬剤誘発性ホスホリピドーシス(DIPL)の原因が,細胞によるリン脂質取り込みの充進ではないことを立証した.具体的には,DIPLを起こす代表的CAD(アミオダロン,クロルプロマジン,イミプラミン,プロプラノロール,クロロキン)をRAW264細胞に投与し,過剰に蓄積されたリン脂質が,リン脂質の代表的取り込み経路(LDL受容体,SR-A受容体,CD36,ピノサイトーシス)の阻害剤によって減少しないことを示した. 2. DIPL陽性のCADは内水相が酸性のべシクル内に効率的に集積するが,DIPL陰性のCADも同様に酸性ベシクル内に集積することを立証した.具体的には,上記5種のDIPL陽性のCADは内水相pH4,外水相pH7のリポソーム内に集積し,その濃縮比は約70~450倍(内水相体積0.25%)であった.一方,DIPL陰性の代表的CADであるジソピラミドも約40~110倍の濃縮比を与え,DIPL陽性/陰性のCAD間で濃縮効果に明確な差異は認められなかった. 3. 上記2の結果を受けて,DIPL陰性のCADも酸性ベシクル内に同様に集積した結果,ベシクル内のpHを上昇させることを確認した.具体的には,DIPL陽性のイミプラミンと陰性のジソピラミドはともに,リポソーム(内水相pH5,外水相pH7)の内水相pHを約6.3まで上昇させ,その効果は同等であった. 4. 以上1~3の結果から,DIPLの発症はリン脂質取り込みの充進が原因ではないこと,ならびにリソソーム等の酸性オルガネラの中和がDIPL発症の唯一の原因ではないこと,の2点が示唆された.
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