ポリフェノール系天然抗酸化物質は、活性酸素種やフリーラジカルを非常に効率良く消去するが、金属イオン存在下では逆に活性酸素種を生成してDNA切断活性を示すことが知られている。これは抗酸化物質によるプロオキダント効果と呼ばれているが、その詳細な分子機構については不明な点が多く残されている。本研究では、プロオキシダント効果の詳細な分子機構解明を目指し、まず、ポリフェノール系抗酸化物質と金属イオンとの相互作用について分光学的に検討した。 抗酸化物質として、フラボン構造を基本骨格とし、分子内のOH基の数が異なるケルセチン、ルテオリン、ケンフェロールおよびアピゲニンを用いた。アセトニトリル中、これらの抗酸化物質にスカンジウムイオンを加え、その溶液の紫外可視吸収スペクトルを観測すると、いずれの場合にも抗酸化物質に由来する吸収の長波長シフトが観測された。これは、これらの抗酸化物質がスカンジウムイオンと錯体を形成していることを示している。B環のカテコール構造の有無および3位のOH基の有無に関わらず錯体の形成が観測されたことから、スカンジウムイオンは、4位のカルボニル酸素と結合していることが示唆された。実際、4位にカルボニル酸素をもたない(+)-カテキンにスカンジウムイオンを加えても、吸収の変化は観測されなかった。今後は、引き続き他の金属イオンとの相互作用についても検討し、活性酸素種生成の分子機構解明を目指す予定である。
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