新規前処理法であるバイアル抽出法のデバイスの開発を行った。本年度は、バイアルにコーティングする抽出剤(ポリジメチルシロキサン:PDMS)の膜厚及び抽出デバイスの形状の最適化を検討した。 バイアルにコーティングされる抽出媒体の膜厚が抽出効率に影響を与えるため、最適化を検討した。50~500μmの膜厚を検討した結果、膜厚を増加させると、回収率も増加する傾向が見られた。この結果は、膜厚が増加することよりも、抽出媒体の量が増加され、高い回収率が得られると推察された。一方、膜厚を増加させると、平衡化までの時間(抽出時間)が増大する傾向も観察された。この結果は、膜厚が増加すると、分析対象物質がポリマーの内部まで移行するのに、相応の時間を要することが考えられた。これらの結果ら、高い回収率により高感度な測定を目指す場合、多量の抽出媒体を用い、前処理時間を短くし、ハイスループットな測定を目指す場合は、100μm以下の膜厚が好ましいことが示唆された。 バイアル抽出デバイスの形状を検討した結果、抽出媒体と試料の接触面積が大きいものが、短時間で高い回収率を示した。また、内部が逆円錐状のバイアルの内面をコーティングすることで、HPLC用のオートサンプラーでの自動分析も可能であった。 以上の結果から、抽出媒体は、100μm以下の膜厚で、多量の抽出媒体を用いて、試料との接触面積が広い形状の抽出デバイスが最適であることが確認された。
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