本年度は、バイアル抽出法に適用できる抽出媒体として、様々なポリマーの合成を試みた。実際には、極性化合物の抽出をターゲットとして、フェニル基を含有するポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリレート、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、高密度PDMSなどを検討した。フェニル基を含有したPDMSは、ガラス面へのコーティングは良好であったが、ポリマー自体の強度に問題があり、今後は、高密度PDMSにフェニル基を導入することで、問題の克服が可能であると示唆された。 これまでに開発じたバイアル抽出法を用いて、環境試料中の分析対象物質の高感度測定法を検討した。実際には、水試料中のビスフェノールA測定に応用した。ビスフェノールAは、フェノール性の水酸基を有しているため、そのままでは極性が高く良好な抽出が行えないため、無水酢酸を用いたin situ誘導体化法を試みた。また、抽出した分析対象物質は、有機溶媒(メタノール)で逆抽出し、大量注入-GC/MSにより測定した。バイアル抽出法の抽出時間及び逆抽出時間は、それぞれ15分及び10分で、ほぼ一定のレスポンスが得られた。既存の方法であるスターバー抽出法(SBSE)では、抽出時間及び逆抽出時間は、60分及び15分であったため、前処理時間を1/4に短縮することができた。また、本法の検出下限(LOD)は、5ng/mLであり、誘導体化を行わない場合と比較して約100倍の高感度化が達成された。以上の結果から、本法が環境分析にも応用可能であることが示された。 本研究で開発されたバイアル抽出法は、半自動化が可能であり、簡便に効率よく分析対象物質を抽出する手法であり、様々な分析に応用できると期待される。
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