統合失調症の主要な病態仮説にはドパミン過剰仮説、グルタミン酸低下仮説、神経発達障害仮説がある。それぞれの仮説に基づき、病態動物モデルが作製されている。我々は、グルタミン酸低下仮説に基づき、ヒトに陽性症状、陰性症状や認知障害も発現するフェンシクリジン(PCP)を連続投与したマウスにおいて陰性症状様の意欲低下や社会性行動障害および認知障害が発現することを報告し、PCP連続投与は、統合失調症の陰性症状あるいは認知障害モデル動物となりうることを提唱している。本研究では、PCP連続投与マウスを用いて新規創薬標的の可能性について検討した。二次元電気泳動によってタンパク質を分離した結果、約960個のスポットが検出された。各群の検出されたスポット数の平均は生理食塩水投与群が965±18個、PCP連続投与群が960±15個であった。個々のスポットについて解析した結果、9個のスポットに有意な発現変化が認められた。PCP連続投与群において発現が増加したスポットが7個、逆に発現が減少したスポットが2個検出された。発現変化が認められた9スポットについて質量分析およびデータベース検索を行った結果、7スポットを同定した。以上の結果からPCP連続投与マウスにおいて発現が変化するタンパク群が存在し、統合失調症関連分子である可能性が示唆された。今後はこれら同定された分子の機能を解析し、病態生理学的意義について検討する予定である。
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