研究課題
46億年間、地球は自転し昼と夜を生み出し続けた。その結果、生物は約24時間の概日リズム、体内時計を獲得した。私達はこの体内時計のおかげで、睡眠、血圧、体温、食餌のリズムをコントロールできる。体内時計の中枢は脳の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus: SCN)であり、SCNは「同調機能」と「発振機能」を持つ。SCNは、機能形態学的に腹外側部(VL)と背内側部(DM)に分けられるが、これらの領域が同調機能と発振機能においてどのような役割を担っているかは不明である。今回、私自身が開発した、哺乳類動物の神経細胞を、動物が生きたままの状態で繰り返し不活性化できるアラトスタチン法を用いて、SCNのVL及びDM各領域の体内時計生理機能を動物個体レベルでの解明を試みた。ます、VL領域のみが、網膜から直接に神経投射入力を受けるので、VL領域が光入力を処理する「同調機能」を担うと仮定し、VL領域に焦点を絞り、実験を行った。感染後、VL領域のみに遺伝子発現を行うVL-AAVにより、VL領域のみにAlstRを発現させることを試みた。AlstR発現後であっても、AL処理前ではAlstRによる過分極作用は起きず、VL領域は通常通り活動し、この段階では「同調機能」及び「発振機能」が保持されていることを確認し、その後で、ALをSCNに注入し、AlstRを刺激して、VL領域の神経細胞のみを不活性化した後に、光入力による「同調機能」が消失するかの検討を試みた。そこで、まずEGFPの発現を指標に、VL-AAVの作製を試みた。VL特異的遺伝子として、VIPを用いた。しかしながら、現段階では、VL領域のみに特異的に感染・遺伝子発現を可能であるAAVを作製しきれていない。これは、AAVが小さなウイルスであることに由来するパッケージのリミットがあることが一因とも考えられる。そこで、他のプロモーター並びにノックインマウス等の作製も視野にいれて対応していく。これらにより、VL領域にのみにAlstRの発現が可能となれば、上記の通り、生理的役割の解明をただちに行う。本研究は、特異的細胞レベルでの動物個体の行動を規定における生理的役割の解明という点で他に例をみず独創的なものである。
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Biomed Res 30
ページ: 87-93
J Invest Dermatol 129
ページ: 1225-1231