研究課題
うつ病の発症機序や抗うつ薬治療の作用機序については未だ不明な点が多いのが現状である。うつ病態・抗うつ治療における分子的なメカニズムについては、視床下部など情動を制御する領域の関与も強く示唆されていることから、本領域の関与について分子メカニズムでの解析を行う必要があると考えた。本研究の目的は、うつ病治療モデルにおいて、脳内の細胞レベル・分子レベルでどのような変化が起きているかを同定することである。本研究で明らかにしようとする内容は、1)抗うつ治療により活性化される視床下部や扁桃体の神経核を特定し、2)そこでの網羅的な遺伝子発現変化を捉え、抗うつ治療プロセスの領域特異的な働きを同定することである。H22年度においては下記のような成果を上げた。・抗うつ治療モデルによる視床下部室傍核での網羅的発現変化の同定抗うつ治療モデルとして、マウスに対し電気けいれんショックを用い、電気けいれん刺激後の脳切片から視床下部室傍核のRNA抽出を行い、マイクロアレイ法による網羅的遺伝子発現の同定を行った。・視床下部室傍核での遺伝子変化の解析発現変化に基づく遺伝子のクラスタリングを行った後、室傍核における遺伝子ネットワーク変化の解析を行ったところ、変化した遺伝子群の内、これまで精神疾患との関連が報告されている遺伝子群との相関が最も高かったのは電気けいれん刺激によって発現が減少する群であることが明らかとなった。・定量的PCR法を用いた遺伝子発現の時間経過変化発現が減少する遺伝子群について、特に精神疾患との関連が示唆されるコレシストキニン・ニューロペプチドY等の室傍核における発現を定量的PCR法にて時間的経過を追って検討した。これらの検討により、抗うつ治療によりこれまで知られていなかった視床下部室傍核での新たな遺伝子発現変化が見いだされた。今後、これら因子が抗うつ治療の効果発現にどのような役割を果たすか検討することが課題である。
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