1、脳形成過程においてFgf19により活性化される細胞内シグナル伝達経路の検討 Fgfrはチロシンキナーゼ型受容体であり、その下流の代表的な細胞内シグナル伝達経路としてはMAPK経路が知られている。そこで、Fgf19がこのMAPK経路を活性化することにより脳形成に関与しているか検討するため、Fgf19機能阻害胚の前脳においてMAPK経路が活性化されているか否か検討した。指標としてMAPK経路の構成因子であるERK1/2のリン酸化について抗体を用いて検出したところ、受精後22時間の正常胚では前脳領域でMAPK経路が活性化していることが明らかになった。さらにFgf19機能阻害胚についても検討を行ったところ、前脳領域ではMAPK経路の活性化が認められなかった。従って、Fgf19はFgfr1あるいはFgfr2を介してMAPK路を活性化することにより神経前駆細胞のGABA作動性介在ニューロンおよびオリゴデンドロサイトへの分化に対しては促進的に働き、ドパミン作動性ニューロンへの分化に対しては抑制的に働くと考えられる。 2、神経上皮細胞のGABA作動性ニューロン及びオリゴデンドロサイトへの分化におけるFgf16の役割の解明 Zebrafish Fgf16も24時間胚の前脳に発現していることを見出している。終脳腹側領域と腹側視床からは主にGABA作動性ニューロンとオリゴデンドロサイトが発生する。そこで、Fgf16機能阻害胚におけるGABA作動性ニューロンのマーカーgad1とオリゴデンドロサイトのマーカーolig2の発現パターンを解析することにより、両細胞への分化にFgf16が関与しているか検討した。その結果、終脳と腹側視床の両方においてgad1とolig2の発現が著しく減少していた。従って、Fgf16も前脳におけるGABA作動性ニューロンとオリゴデンドロサイトの分化に関与していることが示された。
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