研究概要 |
近年、遺伝子改変マウスを用いた研究が盛んに行われるようになり、マウスの効率的な作製を可能にする生殖工学技術が必要不可欠になっている。特に、体外受精技術は、世界中のマウスバンクに凍結保存されている遺伝子改変マウスの精子から、安定かつ効率的に個体を作製する上で、極めて重要な技術である。 本研究では、体外受精技術の改良に有用な基礎情報の収集を目的として、高性能プロテオミクス技術を利用して精子の受精能獲得時に放出されるタンパク質の機能解析を行った。まず、マウス精子のプロテオーム解析を行い、4,457種類の精子構成タンパク質を同定することに成功した。本知見により、約3,600種類の新規精子構成タンパク質が明らかになり、マウス精子の全体像をタンパク質レベルで解明することに成功した。さらに、マウス精子が受精能を獲得する際に、精子から放出される微量タンパク質の同定にも成功した。同定された精子放出タンパク質として、ペプチダーゼ、メンプレントラフィック、サイトカインを介したシグナル伝達に関与する分子の存在が明らかになった。本知見により、マウス精子の受精機能の制御機構に関与する候補分子として、種々の精子放出タンパク質を同定することができた。以上、本研究は、マウスの精子構成タンパク質の全体像や受精能の変化に伴う精子の構成タンパク質の変動を明らかにし、マウス精子の受精機能制御に有用な基礎的知見として、今後の体外受精技術の改良に極めて有用な情報を提供するものである。
|