研究概要 |
コリン作動性神経末端において、アセチルコリン合成の前駆体として必須であるコリンは高親和性コリン取り込み系によって細胞外から輸送される。我々は世界に先駆けてこの系を担う高親和性コリントランスポーター(CHT1)をクローニングし、機能解析を行ってきた(Okuda et al., Nature Neurosci., 2000)。CHT1はコリン作動性神経に必須な機能分子であり、アセチルコリン合成の律速段階を担う。Na^+依存的にコリンを輸送し、hemicholinium-3 (HC/3)によって特異的に阻害される。我々は、CHT1の細胞内移行速度が自身のリガンドであるコリンやHC-3の結合によって制御され、また既知のクラスリン依存性経路とは異なる経路で選択的にトラッフィキングが制御されることを新たに見出した。さらに、この特性を利用したCHT1リガンド評価系を構築して化合物スクリーニングを行い、古くから駆虫薬として知られるニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストのテトラヒドロピリミジン系薬(morantel, pyrantel, oxantel)がCHT1の強力かつ競合的な阻害剤であることを新たに見出した。また、CHT1のオリゴマー化について検討を行い、CHT1が属するSLC5ファミリーのトランスポーター(SLGT, SMVT)がホモオリゴマーを形成することを明らかにした。以上の結果はコリン作動性神経におけるアセチルコリン合成制御の分子機構の解明に寄与すると考えられる。
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