研究課題
ホスホリパーゼA_2(PLA_2)分子群のうち、唯一III型分泌性PLA_2(sPLA_2-III)の欠損マウスのみマスト細胞主体のアナフィラキシーが顕著に改善することを明らかとしている。欠損マウスの組織マスト細胞は、未熟な顆粒を含有し、刺激に不応答であった。当該年度は(1)(2)(3)(4)の4項目に焦点を絞って検討を行った。(1)sPLA_2-IIIは分泌されるのか?マウスならびにヒトの皮下組織において、sPLA_2-IIIはマスト細胞の分泌顆粒に特異的に発現しており、刺激に伴い分泌されることを見出した。sPLA_2-IIIは細胞外分泌性の特徴を生かして機能することがうかがえる。(2)sPLA_2-IIIはマスト細分化成熟に関わるのか?未成熟な骨髄由来培養マスト細胞を皮下マスト細胞に類似の形質を持つ細胞へと分化成熟させ、この過程における遺伝子発現変動をマイクロアレイにより包括的に解析した。野生型マスト細胞では、分化成熟に伴い顆粒の育成、すなわち、ヒスタミン合成やプロテアーゼ合成に関わる因子の発現誘導が見られたが、欠損マスト細胞では見られなかった。これは欠損マウスの皮下マスト細胞が未成熟であることを示唆するものである。(3)sPLA_2-IIIはエフェクター機能に直接関わるのか?sPLA_2-III組換えタンパク質はアナフィラキシー反応を部分的に増幅させた。sPLA_2-IIIは内因性のハチ毒として作用するものと考えられる。(4)sPLA_2-IIIは他のアレルギー応答にも普遍的に関わるのか?sPLA_2-IIIの欠損マウスでは、全身性アナフィラキシーショックや卵白アルブミン誘発皮膚アナフィラキシーの顕著な改善が見られた。したがって、sPLA_2-IIIは即時型アレルギー応答に普遍的に関与することが判明した。以上の解析を通じて申請者は、マスト細胞の前駆細胞が組織に定着した際にsPLA_2-IIIは未成熟マスト細胞から分泌され、マスト細胞を取り巻く微小環境中のリン脂質に作用し、局所環境から産生された何らかの脂質代謝物がマスト細胞の分化成熟を制御するという仮説を立てた。
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