1、遺伝子発現抑圧によるMAP2の記憶形成に及ぼす機能解析 細胞骨格を制御するMAP2が刻印付けに必要な遺伝子であるかどうかを解析するために、独自に確立したin vivo遺伝子導入系を用い、MAP2に対するmiRNA発現ベクターをエレクトロポレーションにより導入し、発現を局所的に抑圧した。遺伝子抑圧を行う脳領域として、刻印付けに伴いMAP2遺伝子発現の上昇が明らかとなっているIMM領域に注目した。遺伝子導入を行った領域では、定量PCRと免疫染色により効率的にMAP2のmRNAとタンパクの発現が抑圧されていることが分かった。そして、刻印付けにどのような影響があらわれるかを解析した。その結果、MAP2の遺伝子抑圧をIMM領域で行ったヒナでは、刻印付けの成立が阻害されていた。このことは、MAP2遺伝子が刻印付けに重要な機能を果たしていることを示している。その成果はNeurosci.Res.(2011)に発表した。 2、MAP2リン酸化が記憶形成に及ぼす影響の解析 細胞骨格を制御するMAP2はリン酸化により細胞骨格から離れ、細胞骨格の脱重合を促進する。MAP2のリン酸化は細胞骨格のダイナミクスを制御し、神経細胞の樹状突起などの構造変化に影響をおよぼす。私は、MAP2のリン酸化が刻印付けの過程で亢進されることを見出した。そこで、MAP2のリン酸化を阻害すると刻印付けの記憶形成過程に影響があるのではないかと考え、MAP2のリン酸化酵素阻害剤の一つリチウムクロライドをニワトリヒナに静脈注射し、刻印付けトレーニングを行った。その結果、MAP2のリン酸化は亢進されず、さらに記憶形成も阻害された。これらのことは、MAP2のリン酸化が刻印付けにおける記憶形成に必要であることを示している。この成果はNeurosci.Res.(2011)に発表した。
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