GPR55は、ヒトでは319個のアミノ酸からなるクラスA(ロドプシン様)Gタンパク質共役型受容体である。我々は、ヒトGPR55を発現させたHEK293細胞を用いてリガンドの探索を行い、リゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジルイノシトール(LPI)が、GPR55を介して、ERK(p42/44MAPキナーゼ)のリン酸化や細胞内カルシウム応答を引き起こすこと、種々のLPI分子種のうち、グリセロール骨格の2位にアラキドン酸が結合した2-アラキドノイルLPIが最も強い活性を示すことなどを報告してきた。しかし、GPR55とその内在性リガンドであるLPIの生理的な意義はまだよく分かっていない。ところで、GPR55はG_<12/13>と共役していることが報告されている。そこで今回の研究では、G_<12/13>を介した作用に注目して実験を行った。まず、G_<12/13>の下流にあるRhoAに及ぼす影響を調べたところ、LPIは、GPR55を介してRhoAを強く活性化することが分かった。次に、RhoAを介して引き起こされる作用について調べた。その結果、LPIは、GPR55及びRhoAを介して細胞のrounding及びストレスファイバーの形成を引き起こすことが分かった。また、LPIはGPR55を発現させたHEK293細胞のp38 MAPキナーゼ及びその下流の転写因子であるATF-2(Activating transcription factor 2)のリン酸化を起こすことも明らかとなった。一方、GPR55の発現をRT-PCRにより調べたところ、GPR55は脳の他、脾臓や胸腺といった免疫系の組織に比較的多量に発現していることが確認された。このことから、LPIはこれらの組織でG_<12/13>及びRhoAを介して細胞骨格系の制御やストレス応答等において何らかの役割を担っていると考えられる。
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