研究概要 |
本研究は,アトピー性皮膚炎の最も重要な症状である痒みの発症機構を解明する一環として,臨床の病態を反映した実験的マウスアトピー性掻痒モデルを開発することを目的とする。これまで研究代表者らは,HR-1系ヘアレスマウスに特殊飼料(HR-AD飼料)を長期間摂食させると,皮膚バリア機能の低下を伴った重度のドライスキンが発症することを明らかにしてきた。前年度(平成21年度)において,通常飼料を摂食させた正常マウスおよびHR-AD飼料を摂食させドライスキンを発症したマウスに,ダニ抗原を含有した軟膏を様々なプロトコールで塗布したところ,ドライスキンを発症したマウスにおいてのみ掻爬痕を伴った皮膚炎症および引っ掻き行動の増加が認められた。一方,HR-AD飼料を長期間摂食させ重度のドライスキンを発症した条件では,動物が衰弱することおよびダニ抗原を塗布しなくても皮膚炎および引っ掻き行動の増加がみられる個体がみられたことから,ドライスキンとダニ抗原によるアレルギー反応が複合した症状を再現性よく発症させることが困難であった。そこで平成22年度の研究では,ドライスキン症状の程度をコントロールできる飼料を検討した。すなわち,通常飼料として汎用される精製飼料AIN-76Aの飼料成分を種々変更した飼料を摂食させた場合のドライスキン症状の程度を比較したところ,HR-AD飼料と同様に必須脂肪酸を欠乏しているが,炭水化物成分として澱粉成分を含有した飼料(A飼料)では,ドライスキン症状の程度が軽度であり,また,その症状が長期にわたり維持されることが分かった。現在,A飼料摂食により軽度にドライスキンを発症したマウスにダニ抗原を繰り返し塗布することにより,引っ掻き行動の増加を伴ったアトピー性皮膚炎様症状が発症するか否か検討中である。
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