平成21年度研究成果 1.細胞内でのuPAR、遊離型uPARの機能を明かにするために、uPAR、遊離型uPAR発現系の作製に着手し、uPAR、遊離型uPAR発現系及びその安定uPAR発現株の作製に成功した。 2.炎症(LPS)によって誘導される破骨細胞分化能のおけるuPARの働きを明らかにすべく、1で作製した安定uPAR発現株にLPS、M-CSFを添加し、破骨細胞の分化能の違いを検討した。その結果、uPAR発現株では、LPSによって、破骨細胞の分化が顕著に誘導される事を発見し、破骨細胞におけるuPARの発現が分化に重要な役割を果たしている事が示唆された。 3.In vivoにおいて、炎症によって引き起される骨破壊にuPARがどのように関与しているか明らかにするために、まず、マウスを用いたLPSによる炎症性骨吸収モデルの作製を行い、そのモデル作製に成功した。その際に、炎症が起こっている骨組織では、uPARの発現が顕著に増加する事を発見した。続いて、uPAR遺伝子欠損マウスを用いて、炎症によって、骨密度及び骨組織の形態がどのように変化するかを調べたところ、uPAR遺伝子欠損マウスでは、LPSによって誘導される骨吸収が野生型マウスと比較して抑制される事を発見した。 4.3で発見した現象の詳細なメカニズムを解明すべく、野生型マウス及びuPAR遺伝子欠損マウスから採取した骨髄細胞を用いて、LPSによる破骨細胞への分化実験を行った。その結果、uPAR遺伝子欠損マウス由来の骨髄細胞からの破骨細胞への分化は、野生型マウスと比較して抑制されていた。また、siRNAによるuPARの遺伝子発現を抑制した細胞においてもLPSによって誘導される破骨細胞への分化は、コントロールと比較して抑制されていた。以上の点から炎症による骨破壊にuPARが重要な役割を果たしている可能性が高い事が示唆された。
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