研究課題
増殖性糖尿病網膜症などの虚血性網膜症では、病態悪化に血管新生が深く関与する。そのため、現在ではこの血管新生を抑制することを目的とした治療が行われている。最近、従来のレーザー光凝固術に加え、血管内皮増殖因子(VEGF)の中和抗体による新たな治療が行われ始めた。しかし、このVEGF中和抗体による治療法が効果的な血管新生抑制作用を示す一方で、副作用などの問題が明らかにされてきた。また、VEGFは、血管新生を伴わない眼疾患患者の硝子体でも発現がみられることから、血管新生を誘導する別の因子の存在が考えられる。これらのことから虚血性網膜症治療における新規標的分子の同定が求められている。研究代表者は、昨年度までに虚血性網膜症モデル(OIR)マウスを用いた研究から、内因性apclinがVEGFとは独立した経路で網膜血管新生に関与することを見出してきた。そこで、本年度は、apelinシグナルを抑制することで虚血性網膜血管新生が抑制できるのか否かについて検討した。また、現在までにapelinシグナルの特異的な阻害剤が開発されていないことから、apelin siRNAを作製し、OIRマウスにsiRNAの硝子体内投与することにより、虚血性網膜血管新生がどのように変化するのかについて、FITCを灌流することによる網膜血管造影法、免疫染色および組織染色法を用いて解析した。その結果、蛍光標識したsiRNAを硝子体内投与することで、投与2日後でも網膜表面に遺伝子導入されていること、さらにapelin siRNAにより網膜におけるapelin発現が約50%にまで低下することを見出した。また、OIRマウスにapelin siRNA投与群した網膜では、コントロールsiRNA投与群した網膜と比較して、有意な血管新生の抑制がみられた。さらに、OIRマウスの網膜表面に硝子体側に突出する構造変化および細胞の侵入がapelin siRNAにより抑制されることを見出した。これらの結果からapelinが新規創薬標的分子として有効である可能性が示唆された。
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Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology
巻: 30 ページ: 2182-2187
http://www.setsunan.ac.jp/~p-yakuch/