研究課題
メタボリック症候群の最上流に位置する肥満症は、視床下部-脂肪組織のフィードバック機構破綻によってもたらされる。本研究は、血液脳関門(BBB)および視床下部機能を調節する「脳神経血管機構(neurovascular unit)」の基幹細胞として「脳ペリサイト」を捉え、脳ペリサイト病変化(肥満増悪因子による脳ペリサイト機能異常)を機軸とした肥満の進展機構を解明しようとするものである。肥満によるBBB機能変化;sodium fluoresecin(Na-F)脳内移行量をBBB機能の指標とし、ICRマウスにhigh fat diet(HFD)を負荷した肥満・糖尿病モデルマウスのBBB機能変化を検討したところ、Na-Fの脳内取り込み量が上昇したことから、肥満・糖尿病モデルマウスではBBB機能が低下することが分かった。モデルマウスにおいて血清中レプチン濃度が上昇していたことから、レプチンのBBB機能に対する作用をin vitro BBBモデルを用いて検討した。レプチン濃度依存的ににNa-Fの脳内移行が減少したことからレプチンはBBB機能を亢進させることが分かった。また、db/dbマウスではBBB機能の変化はなかった。脳ペリサイト病変化機構;肥満状態で増加するTNF-αの脳ペリサイトへの影響をMMP-9を指標に検討した。TNF-α処理によるMMP-9産生はNADPH oxidase阻害薬により濃度依存的に抑制された。また脳ペリサイト産生MMP-9がBBB機能低下を引き起こすことが明らかになった。以上のことから、肥満に伴うTNF-αの上昇により活性酸素種の生成を介して脳ペリサイトが病変化することによりBBB機能が低下することが明らかになった。肥満に伴うBBB機能低下は、血清中レプチン濃度上昇による直接的な作用ではなく、脳ペリサイトなどの細胞を介した間接的な作用であることが考えられる。
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