様々な疾患に関わっている核内受容体はリガンド依存的な転写因子であり、活性化にはコアクチベータータンパク質の結合も必要である。既知の核内受容体モジュレーターは、構造的に内因性リガンド由来の骨格が多く、また他の核内受容体にも作用することによる副作用が治療満足度を低くしている。更に一部の核内受容体モジュレーターについては、薬剤耐性細胞の出現が問題となっている。そこで本研究では、核内受容体の機能を多次元的に阻害することにより、これらの問題点の解決を目指した。最初に、内因性リガンドと異なる骨格を有する核内受容体モジュレーターを5種創出した。次に、核内受容体の1種であるビタミンD受容体(VDR)とコアクチベーターの結合を阻害する低分子を創製した。これは、VDRコアクチベーター阻害作用を有する初めての低分子である。現在、コアクチベーター阻害物質と核内受容体モジュレーターを連結させた化合物の合成を検討している。一方このアプローチとは別に、低分子を利用して標的タンパク質を特異的に分解する手法を開発した。この手法を用いて、核内受容体拮抗作用と核内受容体分解誘導作用を併せ持つ化合物を創出した。
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