昨年度までに構築したデータベースに2010年承認医薬品の情報を追加し、更新した。今年度は主として日米の違いに注目した。医薬品の臨床試験に関する情報(用量反応試験の有無、国内用量反応試験の有無、用量反応試験の用量範囲、用量反応性、第III相試験の種類、申請資料中の外国臨床試験の扱われ方)ならびに市販後の情報(承認条件や全例調査の有無、予測患者数、薬価)も追加した。分析対象品目数は190となった。 分析の結果、用量比は薬効群で異なる分布を示し、抗ウイルス薬では特に日米用量比が1となる傾向にあることが判明した。優先審査品/希少疾病医薬品や外資系企業の申請品目では日米用量比が1となる傾向にあった。市販後安全性の不確実性を示す属性は日米用量比と関連はみられなかった。同様に、体内動態の重要なパラメータである血中濃度下面積(AUC)の日米比や、その他の体内動態関連の医薬品属性は用量比とは特徴的な関連を示さなかった。薬物体内動態の人種差は、個体間変動を予測する上では有用だが、現実に生じた承認用量比を強く説明する要因ではないと考える。関連して、日本で市販後に発生した添付文書の改定と用法・用量の関係の探索を開始した。 医薬品の特性のみならず、開発戦略や規制要件の違いが承認用量の決定に影響を与えている可能性を探索した。日本人を対象とした用量反応試験を実施しており、米国最高用量群が検討用量範囲に含まれていない場合や、国内第III相試験が実施されている場合は、日米用量比が1とならない傾向があった。逆に、申請資料中に外国臨床試験が含まれていることは日米用量比が1となる傾向にあった。こうした結果を踏まえ、今年度以降は、開発戦略に係る企業行動を決定する要因の分析の検討などを継続する予定である。
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