研究概要 |
申請者は、(i)抗炎症性サイトカインIL-4/IL-13をin vitroで2型ミクログリアに処理すると,CD36やneprilysin(NEP)が誘導されAβクリアランスが著明に誘導されること(J.Immunol., 2008)、(ii)アルツハイマー病(AD)モデルマウスにIL-4/IL-13を脳内微量注入すると、Aβ蓄積量が減少するとともに空間認知能力が有意に改善されることを見出した。上記の知見をAD治療法にまで展開するには、上記クリアランス能を誘導できる薬物候補がほしい。本研究ではその候補化合物としてレチノイド類に注目した。今年度得られた知見は、以下の通りである。 1. レチノイド類は、IL-4産生を増大させることが知られているが,ミクログリアのAβクリアランス関連分子に与える影響についてはわかっていない。2型ミクログリアにこれらの化合物を添加したところレチノイドX受容体(RXR)アゴニスト(HX630, TZ335)によりCD36発現が増大した。この誘導は、PPARγアンタゴニストの共添加により阻害されたことより、RXR-PPARγを介してCD36発現が上昇することが示唆された。またRXRアゴニストおよびレチノイン酸受容体(RAR)アゴニスト(Am80)は、NEP発現を増大させた。 2. RARアゴニスト(Am80)が、ADモデルマウス(APP23)の脳内Aβ蓄積量に与える影響を調べた。Am80含有餌を5月齢のAPP23マウスに14週間連日経口投与した(0.5mg/kg/d)。その結果,可溶性画分のAβ_<40,42>には影響を及ぼさなかったが,不溶性画分のAβ_<40,42>量が減少した。特に,不溶性画分のAβ_<42>は、Am80投与により有意に減少した(Biol. Pharm. Bull., 2009)。この結果は、Am80の経口投与はAPP23マウスの脳内Aβ_<42>量を減少させることを示している。
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