研究概要 |
Atpenin A5をリード化合物とした寄生虫complex II選択的阻害剤(新規抗寄生虫薬)創製のために、申請者が確立した全合成経路を応用しatpenin A5の構造活性相関研究を行った。今年度は現在農薬として用いられているcarboxin/flutolanilの部分構造である置換フェニル基等を有するキメラ型atpenin誘導体の合成を目指した。 当初の計画では、2,3-dimethoxy-4,6-di-O-MOM-pyridine(A)の5位にカルボキシル基を導入した後、種々のアミンと縮合することで目的のキメラ型atpenin誘導体を合成する計画だった。しかし、Aのリチオ化後、CO2を用いたカルボキシル基の導入、若しくはアルデヒドを導入後酸化してカルボン酸へと導こうと試みたが、満足する結果は得られなかった。そこで別法でのカルボニルの導入を試みた。即ちAのリチオ化後クロロギ酸ベンジルを加え、5-位にベンジルオキシカルボニル基を導入し、その後ベンジル基を除去することで5-カルボキシルピリジンの合成を行った。得られた5-カルボキシルピリジンに対し種々のアミンと縮合を行ったが、多くの縮合法を試みたものの目的の化合物は得られなかった。そこでAのリチオ化後、対応するイソシアネートを作用させることで、キメラ型atpenin誘導体の合成を達成した。本法にて3種の誘導体を合成したものの、対応するイソシアネートの調製が煩雑であることから、より効率的な合成法を構築することとした。すなわちAのリチオ化後、クロロギ酸メチルを加えることでメチルエステルとし、対応するリチウムアミドと反応させることで目的のキメラ型atpenin誘導体が簡便に合成できることを見出した。 現在構築された経路に従い種々のキメラ型誘導体の合成を行っており、数種の誘導体は活性測定中である。今後誘導体群の活性評価により構造活性相関を明らかとし、更なる優れた寄生虫complex II選択的な誘導体を創製する基礎を構築することができたと考えられる。
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