研究概要 |
近年,世界諸国において肥満症等を基礎疾患とする糖尿病などの罹患者は急増している.本研究課題では,既存の抗糖尿病薬とは異なる機序,即ち肝臓における糖代謝能力の亢進を機序として,血糖値の制御をなしうる物質の探索を行った.肝臓における糖代謝の過程は,(1)グルカゴンにより惹起される糖新生(グリコーゲンの分解)およびインスリンによる糖新生の抑制,(2)食後の血糖上昇時におけるインスリン非依存的な肝臓内への糖取り込みに大別される。一方,肝細胞内への中性脂肪の蓄積は(1)における肝臓のインスリン抵抗性を惹起するとともに,(2)の肝臓内への糖取り込み能の低下をきたすことが知られている.本年度に実施した研究では,(1)および(2)に対する肝機能の亢進作用を有する物質を探索するために,肝細胞内の中性脂肪の蓄積および代謝に影響を及ぼす物質の探索を実施した.その結果,九州地方で糖尿病の治療に使用されているヒュウガトウキ(Angelica furcijuga)根部の含有成分,特にkhelactone型クマリンであるisoepoxypteryxinおよびisopteryxinに2型糖尿病モデル動物であるZucker fattyラットの初代培養肝細胞において,有意な肝細胞内中性脂肪低下作用を見い出した.また,痩身を目的に食品としても利用されているチャ(Camellia sinensis)花部含有フラボノイド配糖体成分に,HepG2細胞においてオレイン酸により惹起される細胞内中性脂肪蓄積を有意に抑制することを見い出した,本研究成果により,肝細胞内の中性脂肪減少に寄与する物質が見い出され,本研究課題の肝臓内中性脂肪の低減(脂肪肝の改善)を介した,肝糖代謝能の亢進を示す,新規抗糖尿病薬候補物質を見い出した.
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