研究課題
結核菌はマクロファージなどに寄生する細胞内寄生菌で、生体内において増殖期と休眠期(休眠菌)の二相性の形態をとることが知られている。現行の抗結核薬は、増殖期結核菌には有効であるが、休眠菌に対して治療効果を示さないため、結核の根絶には休眠菌に効果を示す治療薬の開発が必要である。申請者は、低酸素状態のマクロファージで増大するhypoxia-inducible factor-1α(HIF-1α)が、寄生する休眠菌の機能に様々な影響を与えていると考え、(1)結核菌感染による遺伝子の誘導、(2)結核菌によるマクロファージ内でのHIF-1αの活性化、(3)結核菌のマクロファージへの感染と増殖、について検索した。ウシ型結核菌弱毒株(BCG)を感染させたヒト白血病由来単球(THP-1)マクロファージにおいて、HIF-1αの発現が増大した。さらに、HIF-1α依存的に誘導されることが知られている誘導型NO合成酵素(iNos)や数種のサイトカイン誘導が確認された。次に、iNOS欠損マウス由来マクロファージでは、野生型マウスマクロファージに比べBCGの殺傷力が低かったことから、HIF-1αはBCGのマクロファージ内での増殖に関与する可能性が考えられる。今後、増殖期結核菌と休眠菌によるHIF-1α活性化への影響について遺伝子発現変化を検索し、またHIF-1αのターゲット遺伝子に着目して、結核菌感染におけるHIF-1αの役割を明らかにする。
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