研究概要 |
メタロチオネインは、有害金属や酸化ストレスに対する生体内防御因子として重要な役割を果たしている。本研究では、粥状動脈硬化モデルマウスであるアポリポプロテインE欠損マウス(ApoEノックアウトマウス)とメタロチオネイン-I/IIノックアウトマウスを掛け合わせたApoE/メタロチオネイン-I/IIトリプルノックアウトマウスを作製して、動脈硬化症におけるMTの防御的役割の一端を明らかにし、血管の生理および病理分野におけるおけるメタロチオネイン研究の先駆けとなることを目的とした。昨年度は、1年間を要してApoE/メタロチオネイン-I/IIトリプルノックアウトマウスを作製した。平成22年度は、作製したトリプルノックアウトマウスの繁殖・維持を試みたが、その過程で、このトリプルノックアウトマウスの繁殖率が野生型マウスと比較して明らかに低いことが観察された。本研究で作製した遺伝子改変マウスは今後も解析を継続していく予定である。また、ヒト冠動脈血管内皮細胞を用いて、動脈硬化病変の危険因子の一つであるカドミウム曝露によって変動する遺伝子をDNAマイクロアレイ法により網羅的に解析し、カドミウムにより発現量が2倍以上に変化した遺伝子を3種類、発現量が1/2以下に減少した遺伝子を12種類見いだし、論文として発表した(Fujiwara et al., J.Toxicol.Sci.)。さらに、抗血小板薬であるシロスタゾールが、血管内皮細胞においてメタロチオネインを誘導する結果、動脈硬化病変の危険因子である亜ヒ酸やカドミウムの血管毒性の発現を抑制することも見いだし、論文として発表した(Fujiwara et al., J.Toxicol.Sci.)。
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