研究課題
肝臓の毛細胆管側膜に発現するBSEP(Bile salt export pump)は胆汁酸を濃縮的に胆汁中に排泄することで胆汁流の生成に寄与している。BSEPの阻害は、毒性の高い胆汁酸が肝細胞内に蓄積することで肝障害が惹起されるため、医薬品候補化合物のBSEP阻害能を評価するためのスクリーニング系が構築されている。しかし、既存の評価系では、輸送体の局在性の低下や代謝物が毒性の要因の場合にはその影響を評価し難い。そこで本研究では、ラット、ヒト遊離肝細胞を用いた、新たなBSEP機能評価系の構築を目的として、薬剤性肝障害を起こす薬物について、BSEPの局在性と輸送機能への影響の検討を行った。BSEPの局在に対する影響を評価するため、BSEP-GFP発現MCARh7777細胞株の構築に成功した。またBSEPの内在化を惹起することが報告されているCyclosporinA(CsA)に加えて胆汁うっ滞を伴う肝障害を誘発する医薬品についても構築したBSEP-GFP評価系を用いた検討を行ったところ、胆汁うっ滞型肝障害を惹起する多くの医薬品において、CsAと同様にBSEPの内在化を引き起こす事が新たに明らかとなった。また、グラム陰性細菌の毒素であり、胆汁うっ滞のモデルとして用いられるLiopopolysachalide(LPS)の投与を行い、胆汁排泄輸送体の局在変化に関わる因子として膜裏打ちタンパク質であるRadixinとの結合が重要な因子であることを明らかとし、更ヒト及びラット肝スライスを用いて、酸化ストレスがヒトにおいても胆汁輸送体の局在に影響を与えていることを明らかとした。これらのことから、本研究を遂行することで得られる検討結果をヒトに対して応用する際の重要な知見となることが期待され、今後に発展性のある研究結果が得られた。
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