研究概要 |
Bile salt exporpump(BSEP),Multidrug resistance-associated protein 2 (MRP2)は肝毛細胆管側膜に発現し、胆汁中へと胆汁酸、抱合型ビリルビンを排泄する役割を担っているABCトランスポーター(TP)であり、その細胞膜発現量低下に起因する機能不全はそれぞれ肝内胆汁うっ滞、黄疸を惹起する。両TPの細胞膜発現量の低下には、内在化促進の関与が示唆されているが、その分子機構が不明であるため、これら疾患に対してはtarget-basedな治療薬は存在せず、肝移植が唯一の根治療法である。本研究では、両TPの細胞膜からの内在化及び分解機構に着目し、分子機構の解析を進めた。 膜タンパク質の細胞膜からの内在化/分解シグナルの1つとして、ユビキチン(Ub)化が知られている。Ub化されたタンパク質は、細胞膜から内在化し、初期エンドソームにおいてリソソーム分解経路へと選別を受ける。平成22年度は、BSEP,MRP2の細胞膜からの内在化/分解プロセスに対するUb化の関与を検討した。Ubのドミナントネガティブ体を発現させた培養細胞において、biotinylation法を用いて細胞膜上BSEP,MRP2の分解速度を測定したところ、有意な減少が観察された。一方、内在化速度は、BSEPでのみ低下し、MRP2では変化は認められなかった。また、内在化後のBSEP,MRP2の分解速度は、MRP2においてのみ低下が観察された。以上の結果から、Ub化は細胞膜上に発現している両TPの分解促進に働くが、その機序は異なり、BSEPに対しては、内在化を促進することで、MRP2に対しては、内在化後の分解シグナルとしての働きを介して作用することが示唆された。また、BSEPに関しては、これまでの報告からclathrinを介した内在化が推測されたこと、clathrin-mediated endocytosisのアダプタータンパク質であるAP2 adaptor complex(AP2)の認識配列が細胞内ドメインに存在することから、BSEPの内在化に対するAP2の寄与についても、RNAi法など種々の分子生物学的手法を用いて解析を進め、その関与を明らかにした。今後は、細胞膜上BSEPの内在化/分解機構の全貌の解明に向け、Ub化を介した機構、AP2を介した機構の関連性について更なる検討を加える予定である。
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