研究概要 |
昨年度の研究により、4',6-diamino-2-phenylindole (DAPI)が、肝臓における有機カチオン性物質の取り込みに重要であるorganic cation transporter 1 (OCTI)の基質となることを見出していたため、DAPIを利用したOCT1機能の迅速評価系の確立及びその有用性の検討を行った。 まず、ヒトOCT1 (hOCT1)のcDNAをMDCKII細胞に導入し、安定発現細胞株を作製した。これを用いて、hOCT1を介したDAPIの細胞内取り込みを速度論的に解析した結果、ミカエリス定数は8.9μMと算出された。比較のために、hOCT1の典型的な基質であるtetraethylammonium (TEA)についても同様の検討を行ったところ、そのミカエリス定数は1.8mMであったため、DAPIの方がTEAよりもはるかに高親和性であると考えられる。また、hOCTIを介したDAPI輸送の駆動力についての検討を行ったところ、有機カチオン性基質の輸送が細胞の膜電位に依存しているのに対し、DAPIの輸送は膜電位に非依存的であることが示された。さらに、有機カチオン性の基質の輸送が細胞外pHに非感受性であるのに対して、DAPIの輸送は細胞外pHに感受性であり、pHの上昇に伴いDAPIの輸送も上昇した。一方、hOCT1によるDAPI輸送に対する各種阻害剤の影響は、TEAの輸送に対するものとほぼ同程度であり、これらの間では良好な相関がみられた。これらのことより、hOCT1を介したDAPIの輸送は、有機カチオン性の基質とは輸送特性で異なる点が多いものの、基質認識部位については共通しており、hOCT1の基質または阻害剤の判別において、有効かつ迅速な評価系として利用可能であると考えられる。 今後この新規評価系を利用することにより、薬物間相互作用の予測等の効率化が図れるものと期待される。
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