研究課題
酸素添加酵素フラビン含有モノオキシゲナーゼ3(FMO3)は、生体異物の第一相代謝反応において含窒素および含硫黄医薬品、環境化学物質および食品由来成分トリメチルアミンのN-およびS-酸化反応などを触媒する。このFMO3の機能不全はトリメチルアミン尿症(魚臭症候群)の原因とされている。FMO3はヒト成人肝FMOの主要分子種であるが、胎児期におけるFMO3の発現量は低いことが示唆されている。そこで本研究では、生体試料を活用して、成長過程に伴うFMO3の個人内および個人間変動を明らかにすることを目的とした。尿中トリメチルアミンおよびそのN-酸化体量をガスクロマトグラフィーにより測定し、生体におけるFMO3代謝効率(トリメチルアミン総量に対するトリメチルアミンN-酸化体の割合)を算出した。ゲノムDNAを用いて、FMO3遺伝子のコーディング領域とエクソン-イントロン接合部の塩基配列をダイレクトシークエンス法により解析した。約50名の小児ボランティアの尿試料より得たFMO3代謝効率を集団として解析した結果、被験者の年齢に伴いFMO3代謝効率の増加が認められた。同一被験者内において、異なる観察時期における表現型の変化から、成長に伴うFMO3代謝効率の上昇を認めた事例があった。同じFMO3遺伝子型でもFMO3代謝効率が変動しない小児被験者も見出したことから、FMO3の発現制御は、個人内および個人間で複雑に変動することが推察された。小児の成長に伴い、表現型として評価したFMO3酵素活性は上昇することが判明した。このFMO3の個人間および個人内変動に関する分子生物学的な整理を通して得られる知見は、FMO3を介した小児における臨床薬理学的な薬物相互作用および医薬品適正使用あるいはトリメチルアミン尿症の対処法に向けた基盤情報になると考えられる。
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