研究概要 |
本研究では、カチオン性脂質を用いで超音波造影ガス封入リポソーム(バブルリポソーム)を調製し、低分子核酸キャリアーとしての有用性評価を行った。 バブルリポソーム表面に搭載するsiRNAの血管新生促進効果について、HIF-1・を負に制御するPHD2に特異的なsiRNAを用いて検討を行った。C2C12,HUVEC,さらに下肢虚血モデルマウスの下肢筋組織へsiRNA導入を試み、各種血管新生因子への影響をリアルタイムPCRにより評価した。しかしながら、顕著な効果が認められず、標的因子を変更して再検討が必要と考えられた。 超音波造影ガスの保持能の改善を目的に、DOTAPに代わるカチオン性脂質(DSTAP・DSDAP・DDAB)を含有した3種のバブルリポソームを調製した。siRNAの搭載をフローサイトメトリーにより、超音波照射に伴うキャビテーション誘導能を遺伝子導入効果により、細胞傷害性をWST-8assayにより評価し、赤血球凝集試験、溶血試験による検討も加えた。さらに、バブルリポソームを下肢虚血モデルマウスへ尾静脈投与し、疾患部位における超音波造影効果について、また、治療用超音波照射併用による肝機能および筋組織への傷害性について検討を行った。その結果、いずれのバブルリポソームにおいてもsiRNAの搭載が可能であること、細胞および赤血球、肝機能、筋組織に対する顕著な傷害性は認められないことが明らかとなった。In vitroにおける遺伝子導入効果、および超音波造影能の検討結果より、3種のうちDSDAP含有バブルリポソームが最も有用なキャリアーとなり得ることが示唆された。本研究において開発したDSDAP含有バブルリポソームは、siRNAのみならず、構造や物性が類似したmiRNAの搭載、および細胞内導入効果も認められたことから、低分子核酸キャリアーとして広く応用が期待されるものである。
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