肝虚血再灌流(I/R)障害が腎臓並びに小腸における薬物トランスポータ・薬物代謝酵素に及ぼす影響とその機構に及ぼす酸化ストレスの影響について評価を行った。まず、酸化ストレス起因性の肝・腎・小腸疾患における薬物トランスポータ発現変動を調査し、障害臓器のみならず他臓器においても薬物トランスポータの発現量が変動することを概説し、酸化ストレスが薬物トランスポータの変動因子である可能性を示唆した。次に、肝I/R障害ラットを用い、薬物体内動態実験並びに薬物トランスポータ発現変動に対する酸化ストレスの影響を検討した。その結果、肝I/R障害後に、免疫抑制薬の経口bioavailabilityが顕著に減少することを発見し、その機構として、小腸上部における薬物代謝酵素のCYP3A活性並びに薬物排泄トランスポータのP-糖タンパク質の発現上昇が、小腸上部特異的にCyclosporine Aの吸収量低下をもたらすことを示唆した。一方で、肝I/R処置前に抗酸化物質投与により小腸上部におけるCYP3A活性上昇が抑制され、Cyclosporine Aの吸収低下が改善することを明らかにし、肝I/R障害後に産生する酸化ストレスが薬物代謝酵素並びに薬物トランスポータの変動因子であることを明らかにした。現在、肝I/R障害ラットにおける腎排泄型薬剤の薬物体内動態並びに腎臓におけるトランスポータ発現変動の解析している。
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