本研究では、脳病態時におけるエンドセリンの役割について、脳浮腫関与因子の一つであるアクアポリン(AQP)の発現および機能変化について着目して研究を進めており、平成21年度では以下の知見が得られた。 1. エンドセリンおよびETB受容体アゴニストを処置したアストロサイトにおいて、低張液による浮腫の程度が減少していた。さらに、水銀存在下においてもエンドセリンの作用が認められた。我々はすでにエンドセリンにより培養アストロサイトのAQP4とAQP9のmRNA、タンパク量が減少することを明らかにしており、これらのことからエンドセリンによる浮腫抑制にはAQP4の発現量低下が関与する可能性を示した。 2. エンドセリンによる培養アストロサイトのAQP4とAQP9のmRNA、タンパク量の減少は、ETA受容体アンタゴニストによって影響を受けなかったが、ETB受容体アンタゴニストの前処置によってその作用が消失した。また、ETB受容体の選択的アゴニストによって培養アストロサイトのAQP4とAQP9のmRNA、タンパク量の減少が認められた。 以上の結果を日本神経科学会で発表した。 3. ETB受容体アゴニストのラット脳室内への持続注入は、大脳皮質のAQP4mRNAと蛋白量を減少させた。免疫組織化学的解析により脳内のAQP4産生細胞はアストロサイトであることを明らかにした。 以上の結果を論文発表した。 さらにエンドセリンの作用を追求していく中で以下の知見が得られた。 4. 培養アストロサイトおよびラット大脳皮質におけるVEGF発現がエンドセリンにより増加することを明らかにした。 以上の結果を日本薬理学会で発表した。
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