本研究では、脳病態時におけるエンドセリンの役割について、脳浮腫関与因子の一つであるアクアポリン(AQP)の発現および機能変化について着目して研究を進めており、平成22年度では以下の知見が得られた。 1.すでにエンドセリンによる浮腫抑制にはAQP4の発現量低下が関与する可能性を示したが、今回、AQP9とAQP1の関与について阻害剤を用いて調べた。低張液による水の流入は、AQP1とAQP9の阻害剤である水銀によって抑制されたが、その阻害効果は、エンドセリン処置したアストロサイトにおいても同程度認められた。よって、エンドセリンのアストロサイトにおける浮腫抑制作用にAQP9とAQP1が関与しないことを示唆した。また、エンドセリン受容体ETBのアゴニストによっても浮腫抑制作用が認められたことからETB受容体の関与を示した。 2.また、細胞膜表面の蛋白をビオチン化し、精製することで細胞膜に発現するAQP4の量を検出することに成功した。この方法により、エンドセリンの処置により細胞質ではなく細胞膜上のAQP4蛋白が減少することを明らかにした。 以上の結果を論文発表した。 さらにエンドセリンのグリア細胞に対する作用を追求していく中で以下の知見が得られた。 3.ラット大脳皮質におけるMatrix Metalloproteinase-2および-9の発現がETB受容体のアゴニストにより増加することを明らかにした。また、この作用は、ETB受容体拮抗薬により抑制されることを示した。 以上の結果を論文発表した。
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