胎児や小児に使用される医薬品の多くは、その用法・用量が未承認である。現在、小児の薬物治療領域において、使用経験の少ない医薬品の投与量はYoung式やAugsberger式等を用いることにより、決定される場合が多く、薬物代謝酵素の活性変動と投与されている用量との関係は、十分に検討がなされていない。また、代謝酵素が異なる医薬品に、これらの式をすべて適応させることは極めて困難であり、小児の成長に伴う代謝酵素活性の変動を十分に反映できない。さらに、胎児期における薬物投与量も医師の経験によって決定される場合が多く、胎盤中の酵素活性変動を十分反映できていない。従って、医薬品毎における各代謝酵素の寄与率及び胎児(胎盤)・小児の成長に伴う酵素活性の変動を考慮した用量の設計が必要であると考えられる。今年度は、妊娠20日齢のラットを用い、胎仔肝および胎盤における薬物代謝酵素活性を検討した。検討を行った薬物代謝酵素は、aldehyde oxidase(AO)およびxanthille oxidase(XO)である。AOに関しては、胎仔肝および胎盤にてAO活性が観察された。(成獣肝臓の1/100)また、XOは、胎仔肝臓にその活性が認められないものの、胎盤においては、成獣ラット肝の1/8の活性が観察された。また、Western blotting法により、各組織のタンパク発現量を検討した。その結果、AOは、胎仔肝および胎盤に発現が観察され、XOは胎盤に発現が認められた。また、両代謝酵素ともタンパク発現量と活性の間に相関が認められた。組織による活性差は、タンパク発現に起因するものと考えられる。来年度は胎盤形成直後から出産直前までの酵素変動を検討するとともに、XO、AOとも種差が報告されているため、ヒトにおける変化も検討する予定がある。
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