薬物トランスポーターの機能をin vivoで評価するため、特定のトランスポーターの基質となるPETプローブの探索を計画通り進めている。本研究1年目の21年度の成果として、医薬品、またはその代謝物である2つのPETプローブ評価結果の進捗について報告する。 まず1つ目の候補には[^<11>C]Celecoxibを選び、正常ラットに静脈内bolus投与後、放射能の体内動態をPETで評価したところ、主に肝胆系輸送により排泄されることがわかった。更にMrp2を遺伝的に欠損するラットを用いた比較実験では、正常ラットとほぼ同レベルで放射能が胆汁排泄され、Mrp2以外の薬物トランスポーターが胆汁排泄に大きく寄与する可能性が示された。しかしながら[^<11>C]Celecoxib投与後の胆汁中放射能は代謝物由来、肝臓中の放射能はCelecoxib由来であり、排泄の律速過程は肝代謝であると考えられ、胆汁排泄に関わる薬物トランスポーター機能のPET直接評価に[^<11>C]Celecoxibを用いることは難しいと判断した。次に[^<11>C]CelecoxibのPET試験情報を活用し、Celecoxib代謝物を^<11>C標識にてPETプローブ化し、正常ラットにおける体内動態のPET評価を行なった。^<11>C標識Celecoxib代謝物を正常ラットに静脈内bolus投与後、放射能は速やかに胆汁排泄、一部は腎排泄された。血液、肝臓、尿、胆汁中の放射能は、投与したCelecoxib代謝物由来であり、^<11>C標識Celecoxib代謝物は排泄に関わる薬物トランスポーター機能のPET直接評価が可能な性質を有していた。 今後、薬物トランスポーター欠損動物等を用いたPET試験、輸送試験により、特定薬物トランスポーターの機能評価PETプローブとして、^<11>C標識Celecoxib代謝物の評価を進め、成果を学会発表、論文投稿にて報告する予定である。
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