近年のオミクス解析の進展に伴い、疾患発症の分子メカニズムに基づいた画期的治療薬の開発に期待が寄せられているが、一方で、これら疾患の治療方針のための、マーカー蛋白質(バイオマーカー)の同定は遅れており『低侵襲かつ客観的、定量的に計測出来る臨床評価』のための有効なバイオマーカーの同定技術の開発が必要不可欠である。また、疾患の診断には、疾患組織に効率よく集積する抗体等の分子プローブが必要不可欠であるが分子プローブの標的となる有効なバイオマーカー探索技術基盤が未熟なため、効率よく病巣部位を可視化できる分子プローブは殆どないのが現状である。そこで本申請課題では、『低侵襲かつ客観的、定量的に計測出来る臨床評価』の確立を目的に、疾患の診断に有効なバイオマーカーを探索するための技術開発を行った。我々独自の方法であるin vivo biotinylation法を用いて、Ga1N/TNF投与により肝炎を誘導したモデルマウスのプロテオーム解析を行い、健常マウスと比較検討した結果、Vitronectin等の細胞外マトリクスやDipeptidy 1 peptidase 4等の細胞膜蛋白質等の複数のマーカー分子が同定されていた。今後、これらの蛋白質に関して、実際に肝炎時のどの細胞種(内皮細胞、肝実質細胞等)やオルガネラ(細胞表面、ER等)に発現しているのかを確認するために、組織切片などを用いて免疫染色し、その発現動態に関する検討を行う予定である。
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