ガレクチンはβ-galactosideを認識するレクチンで、細胞の分化や増殖、アポトーシスなどさまざまな生命機能を調節し、15種類のサブタイプが生体内に広く分布する。雌性生殖器ではgalectin-1とgalectin-3が主なサブタイプであり、子宮と膣においてgalectin-1は間質の線維芽細胞に、galectin-3は上皮に発現する。両ガレクチンは性周期や妊娠に伴いダイナミックに発現変動することから雌性ホルモンがガレクチンの発現に関与することが予想される。本研究では、雌性生殖器におけるガレクチンの機能を、雌性ホルモンとの関係に注目して明らかにすることを目的とした。 galectin-1陽性の線維芽細胞は、子宮ではプロジェステロン優勢期に、膣ではエストロジェン優勢期に上皮直下に集積する。galectin-1陽性の線維芽細胞は上皮に向かって突起を伸ばし、白血球を取り込んで上皮への侵入をサポートするような形態を示していた。一方、galectin-3はエストロジェン優勢期に子宮および膣上皮に強く発現しており、特定の時期にgalectin-3陽性のマクロファージが上皮内に侵入していた。 卵巣除去マウスにエストロジェンを投与すると両ガレクチンの発現が誘導されることから、雌性ホルモンはガレクチンの発現調節に重要な役割を果たすことが明らかとなった。また、ガレクチンのリガンド糖鎖との親和性に関与するシアル酸転移酵素などの糖転移酵素の発現も雌性ホルモンにより影響をうけることから、糖鎖とガレクチンの相互作用が雌性生殖器の恒常性維持や粘膜免疫に重要な役割を果たすことが予想される。本研究により明らかとなった所見は、ガレクチンの機能解明に重要な情報を提供すると思われる。
|