ビタミンA誘導体であるレチノイン酸は催奇形因子として知られている。我々のグループは妊娠マウスの特定期間にレチノイン酸を投与すると、胎仔がヒト大血管転位症に似た表現型を示すことを報告した。しかし、そのメカニズムは不明であった。本研究では遺伝子工学および発生工学を用いた解析により、レチノイン酸処理胚でのTbx2の発現が低下し、この発現制御がレチノイン酸シグナルによる直接的な抑制であることを見出した。また、Tbx2は心内膜床形成に必須の液性因子であるTgfβ2の発現を誘導し、このTbx2-Tgfβ2カスケードの異常がレチノイン酸誘導性大血管転位症を発症させる要因の1つであることを示した。
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