研究課題
アポリポ蛋白E(アポE)は血漿に存在する脂質運搬タンパク質である。これまでに動脈硬化症やアルツハイマー病との関連性が多数報告されているが、血管新生との関係については報告が少なくその作用機序は未だ明らかになっていない。そこで角膜焼灼による血管新生誘導モデルを用い、アポEが血管新生を制御するメカニズムを明らかにすることを目的とした。まずアポE欠損マウスとBa1b/cマウスと掛け合わせ、角膜に色素をもたないアポE欠損マウスを作製した。このマウスの角膜を硝酸銀で焼灼し、誘導された血管新生の経過を観察した。新生初期である3日目ではアポE欠損マウスは野生型マウスと変わらず新生血管の萌芽がおこった。新生中期である5日目では野生型マウスと比ベアポE欠損マウスでは新生血管の伸長が止まり、後期である7日目では新生血管が完全に退縮した。さらに焼灼前にあらかじめ角膜下にアポEを含んだマトリジェルを挿入することで新生血管の伸長阻害はレスキューされた。以上の結果からアポEが新生血管の伸展の特に新生中期以降で重要であることが証明された。さらに血管新生は血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の増加により起こることが知られている。そこでアポE欠損マウスの角膜でVEGFの減少が起こっている可能性を考え、ウエスタンブロット法でVEGFのタンパク量を計測した。その結果、アポE欠損マウスの角膜でVEGFの減少はなかった。以上の結果からアポE欠損による新生血管の伸長阻害はVEGFによらないことが分かった。今後はアポE欠損による新生血管の伸長阻害のメカニズムを生理学的な側面と分子細胞生物学的な側面から明らかにする予定である。
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FEBS Letter 583
ページ: 1611-1618