電気生理学的実験において、L型Caチャネル(Cavl.2)の活性はinside-out modeで減衰する(run-down)が、1分以内にカルモジュリン(CaM)+ATPを付加すると回復する。CaMの作用については、直接的な結合によるチャネルC末端近位部の構造変化を示したモデルが報告されているが解明には至っていない。ATPについては、作用機序、結合様式ともに不明である。本研究は、C末端部切断チャネル(Cavl.2△)とCaM融合チャネル(Cavl.2△CaM)を用いて、CaMによるCaチャネル活性の調節機構を解明することを目的とした。Cavl.2△では、inside-outから3-5分間(fast phase>と7-9分間(slow phase)の平均活性は、コントロール(cell-attached mode)に対し、各々13%程度、5%以下で、野生型(Cavl.2)と同様にrun-downを呈した。Cavl.2△CaMは、57%(fast phase)、28%(slow phase)と高い活性を維持した。1μM CaMの付加によりCavl.2△は、Cavl.2△CaMと同程度の活性を示した。また、3mM ATP存在下では、Cavl.2△CaMのslow phaseの活性が更に安定化し(65%)、Cavl.2△にCaM+ATPを付加した場合も同様な反応を示した。これらの結果から以下のことが判明した。1、チャネルからCaMが外れることによってrun-downが誘起される。2、Fast phaseにおいて、Cavl.2△ではCaMのみで活性を維持できる。3、Slow phaseではCaMに加えて、ATPがチャネルの活性を安定化させる。よって、チャネルの活性化にはCaMが、長期の安定化にはATPが重要であることが示唆された。
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