これまでに、L型Caチャネル(Cav1.2)のC末端部切断チャネル(Cav1.2Δ)とCaM融合チャネル(Cav1.2ΔCaM)にパッチクランプ法を適用した結果から、チャネルの活性化にはカルモジュリン(CaM)が、活性の安定化にはATPが重要であることが判明した。また、チャネルの活性は、Caイオン濃度依存的に調整されると同時に、CaM濃度依存的に調整されることが判明している。本研究では、チャネルのCaイオン濃度依存性不活性化(Ca^<2+>-dependent inactivation:CDI)におけるCaMの役割を検討するため、Ca^<2+>濃度-チャネル活性の関係を調べた。その結果、Cav1.2Δ-1μM CaM+3mM ATP(50%抑制値:IC_<50>=2μM)とCavl.2ΔCaM+3mM ATP(IC_<50>=100nM)は、野生型+1μM CaM+3mM ATP(IC_<50>=100nM)と同様にCDIを示した。 Ca^<2+>非感受性CaM融合チャネル(Cav1.2ΔCaMmut)+3 mM ATPでは、高濃度Ca^<2+>でCDIが起きた(IC_<50>=100 μM)。よって、CaMがCa^<2+>センサーとしてチャネルのCDIに関与するとともに、CaM以外のCa^<2+>センサーが働くことが示唆された。また、生理的Ca^<2+>濃度(80nM)において高濃度のCaM(>10μM)を付加すると、野生型と同様にCav1.2Δは不活性化を示す(IC_<50>=2μM)。Cav1.2ΔCaMについては、チャネルとCaMを繋ぐグリシン鎖の長さに依存し、48残基以下では不活性化は起きないが、72残基では不活性化が起きることが判明した(IC_<50>=7μM)。これらの結果から、複数のCaMが同時にチャネルに作用し、不活性化を起こすことが示唆された。
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