上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)を介した腎尿細管におけるNa^+再吸収は、体液恒常性の維持に重要であることが知られている。近年、Cl^-の生理的意義に関しての報告がなされるようになった。昨年度の本研究では、アフリカツメガエル腎由来の腎皮質集合管上皮モデル細胞(A6細胞)のENaC活性における細胞外Cl^-濃度の影響を単一チャネル電流記録法(セルアタッチドパッチクランプ法)において調べ、A6細胞のENaC活性の維持には細胞外Cl^-が重要な役割を担っていることを明らかにした。さらにこの結果は、ENaC自身あるいはENaCの近傍にCl^-を感受する部位が存在し、ENaC活性を制御していることを示唆していた。本年度は、ENaCのCl^-感受部位を同定するため、様々な部位に変異を導入したENaCの作成を試みたが、Cl^-感受部位を同定するまでには至らなかった。また、管腔側膜のENaC数およびラフトへの局在における細胞外Cl^-濃度の影響を明らかにするための予備実験を行った。しかし、ENaC数およびラフトへの局在変化を調べるための十分な実験条件を整えることが出来なかった。今後、本研究はENaCの別の領域を標的として変異を入れると共に細胞外Cl-感受部位はENaCの近傍に存在することを視野に入れて研究を行うことが必要である。本研究が成就しCl^-を感受する特異的な領域および感知機構が明らかになることで、ENaCを介したNa^+再吸収の制御機構のみならず、Cl^-によって制御させる細胞機能の解明にも新たな展開をもたらすことが考えられる。
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